水の音が聞こえた。
蛇口から水面に堕ちるような。一滴一滴ゆっくりと、そして規則正しく。
一滴が水面に落ちる度、頭の中にその音が無限に響いた。
その音に意識を向けていると、なんだか凄く落ち着いた。
どんどんと、その音だけが大きくなっていた。
しばらくして、暗い暗い視界の前に真っ黒な池が現われた。
その中心から波紋が広がり、小さな波がどこまでも流れていった。
夢?
現実じゃないのか?
すぐにわかったけど、それをすぐに否定する。
現実って?
夢って?
それって誰が決めたの?
それが常識?
いや、違う。
少なくとも僕にとっては。目に映るもの、手に触れるもの、聞こえる音、頭の中に映るもの、夢、想像、空想…
発生する場所の違いだけであって、それら全てが僕にとっての現実だから。
全て現実だ…。
そう思った瞬間、規則正しかった波紋が少し乱れた。
ほんの少し。
何かいる。
そう直感した。
なんとなく寒気がした。
得体の知れない物に対するような興奮と恐怖が少しずつ芽生えた。逃げ出したい…
だけどこの先を見たい…
得体の知れない?
自分の中のことなのに?
なんか可笑しかった。
自分自身の現実が、自分の理解の外にある。
全て知っているようでいて実は何も知らない。
ここは本当に自分の現実なんだろうか。
さっきは現実と認めたはずの光景が、あっと言う間に信じれなくなる。
そして次の瞬間…
目覚ましに叩き起こされた…。
もう外はすっかり明るくなっていた。
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